屋久島からもっと離島へ! 秘湯と絶景の火山島・口永良部島の遊び方
屋久島の北西約12キロに浮かぶ、「緑の火山島」とも称される口永良部島(くちのえらぶじま)。周囲約50キロ、人口100人ほどが暮らす素朴で小さな島ですが、ダイナミックで緑豊かな自然と良質の温泉が点在する、秘境とも言える火山島です。そんな口永良部島を安心・安全に楽しむためのお役立ち情報をお届けします。
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(取材・文 屋久島ライター 菊池淑廣)
屋久島から近くて遠い島
島の全域が屋久島国立公園の口永良部島は、屋久島町の行政区域、つまり屋久島町になります。
口永良部島に渡る交通手段は、屋久島と口永良部島を結ぶ町営船「フェリー太陽」のみで、屋久島を経由しないと行くことはできません。
フェリー太陽は、1日1往復のみの運航で、偶数日と奇数日でダイヤが異なるので要注意。観光目的で口永良部島へ行く場合、偶数日に出発する方が時間を有効に使えますが、いずれにしても宿泊することが前提になります。
屋久島からの距離は近くても、遠い島でもあるんです。
古き良き、不便な離島を楽しみましょう
島内にはバスやタクシーなど公共の交通機関はありません。レンタカー業者は1社(畠商会=TEL.0997-49-2281)ありますが、台数が限られているので、屋久島から車を持ち込むのもひとつです。
また、飲食店やスーパーはなく、金融機関はJAと簡易郵便局がありますが、ATMはありません。港のある本村地区には商店があり、ある程度の食料品と日用品は入手できますが、お弁当の類はありません。
到着日のお昼ご飯は、屋久島であらかじめ用意していくといいでしょう。お弁当を用意してくれる宿もあるようなので、相談してみてもいいかもしれません。
港に着いたら、まずは情報収集を
船が着岸して、屋久島から持ち込んだマイカーで下船すると、島の案内をお願いしていた貴舩森(きぶね・もり)さんが笑顔で出迎えてくれました。貴舩さんとは約10年ぶりの再会。
現在は、本村集落の区長を務めながら、消防団の副分団長、町水道の管理業務、民宿経営などもされつつ、エコツアーガイド(口永良部島ガイド協会所属)としても活動されています。
「まあ、言ってみれば島のよろずやですよ(笑)」
貴舩さんはそうおっしゃいますが、バイタリティあふれる、口永良部島の将来を担う若き(ちなみに48歳)人材です。
「まずは、観光案内所へ行きましょうか」
口永良部島の観光と防災情報をまとめたガイドブックを入手するため、港からすぐの観光案内所へ。
また、屋久島町と登山GPSアプリの「YAMAP(ヤマップ)」がコラボして作成した地図には、口永良部島の観光情報だけでなく、噴火警戒区域(立入禁止区域)や避難所、避難シェルター、避難経路など、緊急時にも役立つ情報が掲載されています。
ちなみに口永良部島には、Wi-Fiが利用できる環境がほとんどないのと、移動通信システムが「3G」(掲載時点)のため、アプリや地図は渡航前にダウンロードしておきましょう。
いざ、里のエコツアーへ
観光情報などをゲットしたら、貴舩さんと里のエコツアーへ。
僕のスケジュールの都合上、ダイジェスト版ではありましたが、本村集落の素朴な路地を解説していただきながら歩くと、知られざる見所が随所にありました。
江戸時代、薩摩藩の密貿易所としての英国館があった跡地、西郷隆盛が奄美大島から薩摩へ帰還する途中で滞在したというお宅と、その庭にある「西郷どん」が座った石、などなど。
貴舩さんが所属する口永良部島ガイド協会では、要望に応じてプライベートなアレンジツアーも組んでもらえるそうです。もっと濃密な島旅をしたい人は、相談してみてください。
また、昨年12月には、「屋久島里めぐり推進協議会」に本村集落も加わり、同協議会が主催する里歩きツアーも随時開催しています。昼間のツアーはもちろん、エラブオオコウモリを観察する夜のツアーもあるようなので、興味のある人は要チェックです。
いざという時のために、知っておきたい島の避難計画
里歩きツアーを満喫し、お昼ご飯を食べた後は、貴舩さんに番屋ヶ峰(ばんやがみね)の火山避難施設へ案内していただきました。
本村港から標高291メートルの番屋ヶ峰までは、車で約15分。土地勘のない観光客にも分かるように、避難所を示す標識が随所にありました。
「もしも噴火したら、全島民がここに避難する計画になっています」と貴舩さん。
「移動手段のない観光客はどうすればいいんですか?」と尋ねてみると……。
「島民は避難の際、島外の人でも車で拾いながら避難所へ向かうことになっているので、車を見かけたら遠慮なく乗せてもらってください」とのこと。
これは、ぜひ知っておきたい大事な情報ですね。
「ここは元々NTTの施設で、取り壊す予定だったものを町に買い取ってもらい、できるだけ快適に過ごせる避難施設として改装してもらったんです」
噴火に限らず、津波や台風などの気象災害時の利用も想定しているとのことで、消防団の副分団長だった貴舩さんが、実際に避難生活をされた方々から聞き取り調査をし、広く聞いた意見を集約して町に要望されたそうです。
大型発電機や仮設トイレを備えているほか、建物内には飲料水や非常食の備蓄室、ケガ人の手当にあたる救護室、3部屋ある避難部屋、さらにはシャワー室も備えるなど、数日間は快適に過ごせるであろう設備が整っていました。
火山島ならではの恵み、秘湯温泉“最新事情”
貴舩さんと別れて湯向(ゆむぎ)集落へ。本村から湯向までは、北回りの最短ルートで約13キロの距離ですが、道幅が狭いため車で40~50分かかります。
北回りのルートは、火山島ならではの「秘湯」をはしごできるのが魅力です(南回りのルートは、2020年2月現在、噴火警戒区域のため通行できません)。ちなみに口永良部島には、信号機がひとつもありません。
まずは、13年前にはなかった「本村温泉」でひと風呂浴びたいところでしたが、営業時間が16時~20時とのことで、今回はタイミングが合わず諦めました。
◆本村温泉
アクセス/本村港から徒歩約5分
入浴時間/16:00~20:00(月曜定休)
料金/大人300円、子供100円
ならば、本村から程近い、海岸に湧き出る西ノ湯(にしのゆ)温泉へ。前年の台風で上屋が飛ばされ、湯船も埋没してしまったそうです。
現在は、湯船は復旧して入浴はできるようになりましたが、完全に「野天」状態。温度管理などもされていないとのことでしたが、奥の湯船はちょうどいい湯加減でした。通りかかった島人によれば、「奥の湯船にある栓を抜けば、熱い湯が出てくる」そうです。
◆西ノ湯温泉 ※上屋再建予定
アクセス/本村港から車で約10分(徒歩約20分)
入浴時間/24時間可
料金(協力金)/大人200円、子供100円
寝待(ねまち)温泉もいい温泉なのですが、土砂崩れのため利用中止となっていて、現在は入浴できません。湯小屋手前の山が大きく崩れていて再崩落の危険もありますので、特に雨のときは近寄らないほうがよさそうです。
◆寝待温泉 ※閉鎖中(2020年2月現在)
アクセス/本村港から車で約30分
入浴時間/24時間可
料金(協力金)/大人200円、子供100円
※混浴
寝待からは、屋久島の森に匹敵するほどの照葉樹林に囲まれた道をドライブしながら、30~40分で湯向集落に至ります。
湯向温泉に入るだけでも、口永良部島へ来る価値があると言っても過言ではありません。風情ある木造りの湯小屋で、硫黄のにおいと湯の花が漂う、まさしく火山島らしい温泉です。入浴シーン(笑)の写真を撮ったあとは、まったりと極上の湯を堪能させてもらいました。
◆湯向温泉
アクセス/本村港から車で約45分
入浴時間/24時間可
料金(協力金)/大人200円、子供100円(湯向集落の民宿の宿泊者は不要)
(※老朽化に伴う移設が計画されており、現在の温泉建屋は取り壊される予定です)
島の幸と焼酎で大満足
温泉を満喫した後の楽しみは、何といっても島の幸ですよね。
湯向にある民宿は2軒ありますが、今回は「民宿あぐり」に宿泊しました。ご主人自ら漁に出られるので、新鮮な海の幸が食卓に並びます。
口永良部島では、魚も貝も「大物」が多く、今回は「ジンガサ」という貝を囲炉裏で焼いていただいたのですが、屋久島で獲れるものに比べてかなり大きく、食べ応え十分な美味しさでした。
食べ終わった頃にご主人とその友人(たまたま仕事で屋久島から来ていた同級生)が合流し、ごく自然に「飲んかた(=飲み会)」がはじまります。口永良部島でも定番の焼酎「三岳」ですっかり盛り上がったのでした。こうした交流も、島旅の楽しみのひとつですね(笑)
「緑の火山島」の絶景ポイント
秘湯めぐりの翌日は、絶景めぐりの予定でしたが、朝からあいにくの雨。
やはり北回りで本村集落まで戻ったら、島の西側を目指します。新村(しんむら)集落の跡地を抜けていくルートを辿ると、さらに道幅が狭くなり、竹が道路に覆いかぶさってくるとともに、シカや野生化したヤギを多く見かけるようになります。島を隈なく見てまわりたい人は、軽自動車などコンパクトな車で行くことを強くおすすめします。
そして“大都会”、屋久島へ
噴煙を上げる口永良部島を後にして、帰りは遊覧気分を味わう余裕はなく、前後左右に揺れる船室で横になったまま、気づいたら屋久島の山並みが近づいていました。
「屋久島は都会だなぁ……」
僕の暮らす屋久島に降り立つと、13年前とまったく同じ印象を抱きました。
港にはフェリーや高速船のターミナルが建ち、車を走らせればすぐに信号機が見えてきて、交差点にはビジターセンター、道路沿いには土産店やスーパーなどが立ち並んでいます。
地元に帰ってきたという安堵感とともに、まるでタイムスリップしてきたような、不思議な感覚に襲われるのです。
「何もないから、自分でつくり上げるというおもしろさがあるんですよ」
笑顔でそう語っていた貴舩さんの言葉が、僕の頭の中にこびりついていました。
“なんにもない”という価値。
それこそが、口永良部島の本質的な魅力なのかもしれませんね。
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