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これぞ世界自然遺産! 九州最高峰を擁する「洋上アルプス」の世界

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屋久島の中央部には、九州最高峰の宮之浦岳(1936m)を中心に、「奥岳(おくだけ)」と称される標高1800メートルを超える山々が連なっています。海から屹立する山岳地形ゆえ、「洋上アルプス」とも称されますが、実に九州の山岳標高トップ8までの山が屋久島にあります。そんな洋上アルプスに展開する、屋久島の真髄とも言える山岳の世界を紹介します。

 

(取材・文 屋久島ライター 菊池淑廣)

世界自然遺産としての屋久島

屋久島が世界自然遺産に登録されたのは、1993年のこと。来年(2023年)には、登録30周年の節目を迎えます。

 

屋久島の世界遺産登録地域は、島全体の約20パーセント。登録の主な根拠となったのは、亜熱帯から亜高山帯までの植生の垂直分布が見られること、樹齢数千年の屋久杉など稀有な森林植生が見られることなどです。

 

例えば、多くの観光客が目指す縄文杉は、世界遺産登録の根拠になった一要素といえます。一方、映画『もののけ姫』の風景モチーフになったとも言われる白谷雲水峡や、屋久杉の巨木が比較的手軽に見られるヤクスギランドは、世界遺産地域には含まれていません。とはいえ、いずれも屋久島屈指の美しい森で、屋久島を象徴する風景に出会えます。

 

屋久島は世界自然遺産として、その「顕著な普遍的価値」が認められたわけですが、世界遺産登録地域であるかどうかにかかわらず、誰もが唸ってしまうほどの素晴らしい自然景観が随所で見られるのです。

山岳島ならではの、洋上アルプスの世界

屋久島を象徴する自然景観は、屋久杉の巨木や苔むす森だけではありません。宮之浦岳を中心とする洋上アルプスが連なる島の中央部には、南の島とはまるで思えない山岳風景が広がっています。それもまた、屋久島を象徴する自然景観のひとつです。

世界自然遺産の核心とも言える領域ですが、まさしく屋久島の真髄が凝縮されたエリアです。標高1360メートルの淀川登山口から宮之浦岳に至るルートは、縄文杉ルートや白谷雲水峡などに比べて登山者は少ないものの、もっと注目されるべきスポットのひとつです。

 

「宮之浦岳って、本格的な登山者が行くところでしょ?」

 

そう考えている人も多いと思います。確かにその通りですが、宮之浦岳をゴールにする必要はありません。ここのルートは、自然景観のバリエーションが実に豊かで、屋久杉をはじめとする巨木の森、どこまでも澄み透った清流、日本最南端の高層湿原、そして森林限界に至れば、まさしく洋上アルプスの絶景が展開します。

 

屋久島の象徴的な自然景観がこれほど凝縮されているルートは、他にありません。ピークを目指さなくても、屋久島の魅力を十二分に享受できるのです。

一度は見ておきたい「天空のお花畑」

そんな屋久島の奥岳エリアが、よりいっそう美しく彩られる季節があります。梅雨の時期ではありますが、5月下旬から6月上旬にかけては、屋久島の固有種、ヤクシマシャクナゲが咲き乱れるとき。濃い紅色から純白へと移りゆくグラデーションの色彩は、どことなく高貴で妖艶な雰囲気を漂わせます。

比較的高地に分布しているため、白谷雲水峡や縄文杉ルートでは見られませんが、宮之浦岳ルートでは、起点となる淀川登山口がすでに標高1360メートルに位置するため、登り始めから見ることができます。

 

なかでも見応え十分な「シャクナゲ・スポット」は、標高約1640メートルに広がる高層湿原、花之江河や、同じく1680メートル付近の投石平(なげしだいら)をはじめ、黒味(くろみ)岳(1831m)や宮之浦岳などの山頂帯です。

淀川登山口から花之江河や投石平までは、高低差300メートル前後、一般的なコースタイムで片道3~4時間程度で、登山道も歩きやすく、それほどハードな行程ではありません。それでいて屋久島らしい様々な自然景観が楽しめるので、注目されないのがもったいないくらいです。

 

もうちょっと頑張りたい人は、九州6番目の黒味岳をゴールに設定するのもおすすめです。日帰りの場合、宮之浦岳は往復約16キロを歩くハードな登山ですが、黒味岳は約10キロと程よいレベル。花之江河から黒味岳山頂までは片道1時間程度で、ロープ場を登る箇所もありますが、山頂からは宮之浦岳を中心とする洋上アルプスの絶景を一望できます。ヤクシマシャクナゲの咲く季節なら、まさしく「天空のお花畑」が広がる格別な風景にも出会えます。

縄文杉だけが、屋久島じゃない!

2018年から約3年半にわたって屋久島の記事を執筆させていただいた「Re島ブログ」ですが、今回の記事が屋久島の最終回となります。

 

これまで縄文杉だけではない屋久島の魅力を知って欲しくて、多少の独断と偏見を交えつつ、様々な角度から屋久島を紹介してきました。

 

もちろん縄文杉は、唯一無二の存在であり、多くの登山者を圧倒し、魅了し続けています。今回紹介した宮之浦岳を中心とする洋上アルプスの世界も、世界自然遺産たるディープで豊かな屋久島の自然景観にあふれています。

縄文杉も宮之浦岳も、屋久島を語る上で欠かすことのできない重要なファクターです。しかしながら、それらは屋久島を象徴する一片であって、すべてではありません。縄文杉や宮之浦岳をゴールに設定しなくても、屋久島の素晴らしい自然景観を堪能できるし、その本質に触れることもできます。もっと言えば、僕たち島民の生活圏にも、フッと力が抜けるような、ホッと癒されるスポットはたくさんあるのです。

 

屋久島の真髄は、もっとディープであり、もっと身近でもあります。メジャーな情報だけに囚われず、自分の体力や技量に合わせて、自然体で屋久島を旅して欲しいと思います。

 

ココロとカラダに余裕があってこそ、屋久島の真髄に気づくことができるでしょう。